「みんな、逃げろ！爆発するぞー」

　気が付いたのは、病院のベッドの上だった。右手の人差し指は無く、親指と中指は残ってい たが、感覚が無い。直接手榴弾を持っていたら、恐らくひじから先が無くなっていただろう。 手が残っていただけでも幸いだ。右腕は破片がまだ１０個以上残っているが、神経は無事だっ たらしく、指は動かせる状態だ。耳栓と鼻栓をしていたおかげもあって、頭部にはダメージが 無く、全治２ヶ月で済んだ。とは言え、失った指は戻って来ない。
　退院後、拘置所に移された。２年後判決が下り、懲役１８年の刑が確定した。陸自の親友は 計画を知らされていなかったという理由で、懲戒免職と執行猶予だけで済んだ。
　自分のやった事に対して、反省など微塵もしていないが、自分の人生が、はたしてこれで良 かったのかどうか、壁に向き合って考えるのが日課となった。世間の評価は意外に冷たい。 「馬鹿な奴・・」その一言で済まされてしまう。堕ちぶれた戦略家の悲しい末路だ。いっその 事、一緒に死んだ方がましだったろうか。

あらゆる手段は、時と場合により１つの選択肢となりうる可能性を排除すべきではない。合法・ 非合法は関係無く、ある視点からみて、総合的に犠牲（リスク）と効果（利益）の大小を比べて 判断すべきだ。視点はグローバルな方が良いが、あまりグローバル過ぎると虚無思想に繋がり、 却って実行力を失う。私のように・・。